活字の雰囲気を持つレトロ系明朝体の中でも非常に人気の高いイワタ明朝体オールド。金属活字時代から多くの書籍に使用されてきた伝統ある「岩田明朝体」をデジタル化した書体です。
現在も書籍、とくに小説などの文芸作品では最も頻繁に使用される書体のひとつであり、活字特有の起筆・終筆部のアクセントは力強く、ふところの引き締まった仮名が可読性を高めています。
そんなイワタ明朝体オールドの人気の秘訣、おすすめのポイントを徹底解説。OS標準搭載の明朝体との比較も。こだわりの文章をさらに高めるイワタ明朝体オールドの魅力をお届けします。

2016年の芥川賞受賞作品である『コンビニ人間』(村田沙耶香著 文藝春秋刊) をはじめとする多くの文芸作品で使用されるイワタ明朝体オールド。映画化され大傑作となった原作『君の名は。』(新海誠著 角川文庫刊) では、漢字はヒラギノ明朝ですが仮名はイワタ明朝体オールドが使用されています。その他にも中公新書やハヤカワ文庫の多くの作品でも目にすることができるイワタ明朝体オールドは、いったいどのような書体なのでしょうか。
書籍組版にはなくてはならないスタンダードなこの書体、今はPCに搭載するデジタルフォント「イワタ明朝体オールド」として流通していますが、産声を上げたのは終戦後の昭和26年 (1951年) でした。もちろん金属の「活字」です。

戦後復興を急ぐ当時、印刷や出版の需要がめざましく増加し、それに見合う活字の生産が求められました。
当時の活字は熟練した種字彫刻師と言われる職人が木材の黄楊 (つげ) や柔らかい金属の上に逆文字を直接彫刻 (凸の文字) し種字 (原字) を制作します。その種字から母型 (凹型) を作成し、その母型に金属を流し込み活字を生産していました。
活字のサイズごとに種字を彫刻する必要がありました。そのため文字デザインのばらつきが発生しがちで、また母型の耐久性も高くはありませんでした。日本語は文字数が多い上に画数が多く、明朝体の細い横線や左右のはらいの先端が鋭利で欠けやすい点もあり、良質の活字を大量生産するには困難があったと言われています。

そこで導入されたのが「ベントン母型彫刻機」(写真:右) でした。この機械の出現で文字のデザインや母型の制作手法は大きく変わりました。
まず、デザイン用紙に文字をデザインし、それをジンク板と呼ばれる金属版にエッチングの手法で彫刻し文字パターン (凹版、写真:下/左) を作ります。その文字パターンを「ベントン母型彫刻機」にセットし文字の凹部分をなぞることで彫刻機が連動して動き、1つの原字から様々な文字サイズの母型 (凹型) を彫刻しました。この母型を使い活字が生産されました。(母型と活字、写真:下/右)
繊細に美しく設計された文字を安定して大量に生産できる、まさに、当時最新の画期的な手法でした。(※各写真ともクリックで拡大表示)
この手法をいち早く導入したのが株式会社イワタの源流である「岩田母型製造所」でした。
昭和25年 (1950年) にいち早く「ベントン母型彫刻機」を導入し、書体の開発を開始しました。活字の様々な文字デザインを参考にしながら、文字デザイナーは可読性が高く美しい文字を開発するため様々な工夫を行いました。活版印刷では活字を紙に押しつけます。そこで発生する文字のにじみ量を計算し、明朝体に最適な縦横の線幅を研究しました。またそれを「ベントン母型彫刻機」の特性にあわせるなどの様々な試行錯誤の末、可読性の高い漢字や仮名のデザインを作り上げました。

その結果、昭和26年 (1951年) に発表された「岩田明朝体」は、出版社、新聞社、印刷会社から高い評価を受け、全国シェアの65%を占めるに至りました。これが現在の「イワタ明朝体オールド」の原型です。
このように活字開発の先駆者たちの経験と当時最新の生産技術を組み合わせることで、現在につながる可読性の高い書体ができあがりました。書体には流行廃れはあります。印刷技術も日々変化しています。でも流行に左右されない縦組みで読みやすい日本語書体には、先人たちの様々な工夫と経験が詰め込まれてます。こうしてイワタ明朝体オールドは、現代においても様々な書籍で目にすることができるのです。

「岩田明朝体」をデジタル化した「イワタ明朝体オールド」は、活字特有のアクセントを持つ書体です。

たて・よこの始線の起筆部、終筆部には活字特有のデザインで、力強い印象を与えます。
(※クリックで拡大表示)

引き締まったふところも、活字時代に見られる伝統的印象を与える特徴。
仮名は全体的に少し小さ目にデザインされており可読性を高めています。
(※クリックで拡大表示)

イワタ明朝体オールドとWindowsやMac OSに標準搭載されているものなど、主な明朝体 (MS P明朝、ヒラギノ明朝、小塚明朝、游明朝) との比較です。
他の書体と比べると、活字時代特有のエレメントが馴染みを感じさせる字形・字体です。組まれた状態では、古風な印象を持ち、すこし平たく小さめにデザインされた仮名が可読性を向上させています。


(※クリックで比較見本を表示)

本文に最適な「イワタ明朝体オールド」ほか全5種類の太さをご用意。小見出し、大見出しなど用途に合わせてご使用ください。(※各画像ともクリックで組見本を表示)
イワタ明朝体オールド
イワタ中明朝体オールド
イワタ太明朝体オールド
イワタ特太明朝体オールド
イワタ極太明朝体オールド

決済後すぐに使えるダウンロード製品と、お届け後にお使いいただけるCD-ROM製品をご用意しています。
ダウンロード
製品 |
OpenType
Pr6/Pr6N版・Pro版 |
¥19,800 (税込)↓
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 |
OpenType
Std版 (※1) |
¥13,200 (税込)↓
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TrueType版 (※2) |
¥9,900 (税込)↓
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CD-ROM
製品 |
OpenType
Pr6/Pr6N版・Pro版 |
¥22,000 (税込) |
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OpenType
Std版 (※1) |
¥15,400 (税込) |
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※1 特太および極太ウェイト製品は未発売 (2016年11月現在)
※2 TrueType製品はWindows版のみ販売中

イワタ明朝オールド製品は、古いアプリケーションソフトでも安心して使えるTrueTypeと、高度な機能を備え特にDTPで威力を発揮するOpenTypeの、2つのフォント形式で提供されています。
このうちOpenType形式については、収録文字数の違いによる Pr6(Pr6N)・Pro・Std の3グレードの製品が用意されており、目的とご予算に応じてお選びいただけます。
フォント名 |
文字セット |
収録文字数 |
字形 |
OpenType Pr6N版 (※1) |
Adobe-Japan1-6 |
23,058文字 |
JIS2004標準字形 |
OpenType Pr6版 (※1) |
JIS90標準字形 |
OpenType Pro版 |
Adobe-Japan1-4 |
15,444文字 |
JIS90標準字形 |
OpenType Std版 |
Adobe-Japan1-3 |
9,354文字 |
JIS90標準字形 |
TrueType版 (※2) |
JIS X 0208-90 + イワタ外字 |
約9,080文字 (※3) |
JIS90標準字形 |
※1 パッケージ・ダウンロードとも、1つの製品にPr6とPr6Nの2フォントを同梱
※2 イワタ書体の場合、TrueType製品はWindows版のみ販売中
※3 JIS X 0208-90の6,879文字+イワタ外字約2,200文字

チラシやポスター、商品パッケージ、同人誌などの印刷物から、画像化していれば名刺、Web、タイトル・ロゴデザイン、ゲーム、YouTubeなど映像・動画配信での利用が可能です。
印刷 |
Web(画像) |
ゲーム |
映像 |
ロゴ |
〇 |
〇 ※1,2 |
▲ ※4 |
〇 ※2 |
〇 ※3 |
※1 フォントファイルのサーバーへのアップロード (Webフォントを含) は別途商利用の契約が必要。
※2 画像化したものの使用に限ります。プログラムへの組込使用は別途商利用の契約が必要。
※3 商標登録可。フォントのタイプフェイス及びプログラムの独占使用は不可。
※4 ゲーム・アプリへの使用は別途商利用の契約が必要。
1製品につき、PC1台にのみ使用可能です。複数のPCで使用する際には、台数分の製品を購入してください。
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