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わたしの好きなフォントの話。 本多育実-

株式会社イワタの書体デザイナー本多育実さんにインタビュー!

イワタミンゴイワタ福まるごイワタ福まるごウネルなどの開発に携わった書体デザイナー・本多育実さんにインタビュー!この記事では、本多さんのプロフィールや人柄に触れながら、フォントデザインの魅力や制作秘話をたっぷりとお届けします。

本多 育実

株式会社イワタの書体デザイナー。筆文字からフォントの世界に興味を持ち、日々勉強中。
携わった主な書体:イワタミンゴイワタ福まるごイワタ福まるごウネル、他

似顔絵:二宮 由希子 http://www.tis-home.com/yukiko-ninomiya

ひととなり編

最近、刺激を受けた作家さんがいらっしゃいましたら教えていただけますか?
ハリーポッターのスタジオツアー東京に遊びに行った際、グラフィック作品も数多く展示されていたことが印象的でした。教科書、手紙、パッケージ、大きな看板から小瓶のラベルまで、全てのアイテムに世界観を作り上げるこだわりを感じました。特にMinaLimaのお二人によるデザインが魅力的で、文字を使った作品も多くどれも飾りたくなります。
MinaLima(ミナリマ)とは?
MinaLimaはミラフォラ・ミナとエドゥアルド・リマから成るデザイナーコンビで、映画『ハリー・ポッター』シリーズや『ファンタスティック・ビースト』シリーズのグラフィックデザインを手掛けたことで知られています。
音楽や映画、アートなど、クリエイティブな刺激を受けるものがございましたら、ぜひお聞かせください。
文字関連になってしまいますが、書道やカリグラフィーなど手書き作品の展示では、文字の形だけでなく墨の濃淡や素材、大きさなど、図録では再現しきれない部分まで味わえ、実際に誰かが書いているということを強く実感できます。修整のできない、腕がストレートに現れるものなので、焦りのようなよい刺激を受けます。
ちなみに今年2024年はどんな作品展や企画展に行かれましたか?
上野の国立西洋美術館で開催されていた、内藤コレクション「写本 — いとも優雅なる中世の小宇宙」は撮影OKということもあり、2日に分けて鑑賞しました。また今年に限らず、「市谷の杜 本と活字館」や「印刷博物館」での文字関連の展示は見に行くようにしています。
お仕事をされる際に、ルーティンや習慣として心がけていることがあれば教えてください。
気持ちが引き締まるので、立って作業する時間をつくるようにしています。その日の作業内容や気分によって環境を変えられ気持ちも引き締まるようになりました。
普段使用しているお仕事道具や制作環境の中でこだわりのグッズがあれば教えてください。
特にこれといったこだわりはなく、MacBook Proを使用しています。アナログは鉛筆、0.3mmのシャーペン、場合によっては筆や筆ペンを使うこともあります。最近は「筆ごこち」(呉竹) の書き味が好きです。
「筆ごこち」をどのようにしてお知りになりましたか?
インクカートリッジ不要で筆らしい書き味のペンを探す中で出会いました。普段使いしやすいのでラフスケッチやメモなどによく使っています。
筆ごこち とは?
株式会社呉竹より発売の「筆ごこち」は、直液式インクを採用し、最後までムダなく使い切れる筆風サインペンです。筆風サインペンや極細タイプ・うす墨など、バリエーションなペン先も魅力の一本です。
デザイン以外で、現在夢中になっていらっしゃる趣味や活動がありましたら、ぜひ教えてください。
友人の誘いがきっかけで野球観戦が好きになりました。全身を使い、毎日に勝敗や緊張の瞬間があるという、書体設計とは全く異なる世界が新鮮でした。華麗なプレーや劇的な展開を現地で味わえたときは最高です。
『あなたの生きがい』について、お聞かせいただけますでしょうか。
好きなことと向き合う日々を過ごせていることは幸せだなと感じています。リラックスできて大切な時間です。

フォント編

フォント作りに興味をお持ちになったきっかけ、フォントデザイナーになられた経緯や、書体デザイナーを目指された理由について教えていただけますか。
昔から文字も絵も描くことが好きで、高校は書道、大学はデザイン科に進みました。その大学でフォント制作の授業があり、フォントデザイナーという職業を知りました。毎授業が楽しく、ちょうど書体関係の展示やイベントが開催されていたことも幸いし、文字や書体設計について学び今に至ります。
続いての質問ですが、書体作成の経緯やデザインコンセプトについて、作成当初から完成までの流れをお聞かせください。
イワタでは部署の垣根を越えて意見を出し合います。面白さ、需要、挑戦、きっかけは様々です。文字自体のスケッチから基本字種はデザイン部がメインに、拡張作業ではオペレーターが加わり、最後はエンジニアがフォントデータに変換します。もちろん、受注案件の場合はクライアント様のご要望に沿って制作を進めます。一方で、自分自身で「こういう書体をつくりたい」と発案することや、会社として「このジャンルが不足しているのではないか」といった視点からアイデアを提案することもあります。

業務としてのオリジナル書体であれば
  • イメージ作りのラフスケッチ
  • エレメントや太さの検討
  • アウトライン化〜組サンプル作成
  • 基本字種作成
  • 字種拡張
  • 検査、フォント化
株式会社イワタのnote「フォント制作の現場」
フォントがどのように生み出されるのか、その制作工程をご紹介しています。
フォント完成までに多くの作業がありますが、本多さんの中で一番大変だと感じるものはどれでしょうか?
先述の通りイワタでは漢字などの拡張作業は山形にいるオペレーター部隊が担っています。そして複数人で1つの書体をつくるには意識合わせが重要です。書体のコンセプト、骨格や線の形状からデータ作成時のポイントの置き方まで感覚ではなく具体的に説明できなければなりません。基本字種をつくりながら自分の中でしっかりとデザインを固め、それを的確に伝えることで、意図通りに制作してもらえるよう心掛けています。
1つのフォントを完成させるまでに、どれくらいの時間がかかるものなのでしょうか?
これはイワタの場合になりますが、完全に新規のフォントを作るには、数年かかることが多いです。既存書体を元に字種やウェイトを追加するような場合は、オペレーターチームの作業スピードが非常に早いので、制作期間を短縮することも可能です。
フォント制作で特に意識するところはどこですか? それはなぜですか?
1字1字の形、全体の統一感、組んだとき目的に合った役割を果たせているかなどはもちろん大切です。そのような大前提の他、アウトラインの美しさも重視しています。
というのもイワタでは長年、IKARUS (イカルス、以下IK) というツールを使用してきました。IKは縦横15,000メッシュの中で文字のアウトラインを作ります。しかしフォント化の際に縦横1,000メッシュに変換されるため、微妙な曲線などが再現できない場合がありました。
そこで2015年頃からは、変換誤差の少ないツールGlyphs(グリフス)も導入し、書体に合わせ使い分けています。こちらは変換後と同じ値での作業が可能です。今でもIKが必要な業務もあるため、IKで作成しGlyphsで仕上げるという方法も可能になりました。
以降の新規書体では、大型のグラフィックにも対応できるようより高いクオリティを追求し、フォントの美しさと実用性を両立させることを目指しています。
フォント作りのアイデアやインスピレーションは、どのようなところから得ていらっしゃいますか?
例えばプレゼン資料や広報のグラフィックなど制作していると、手持ちの書体ではしっくりこないことがあります。そういった気付き、イワタのラインナップにまだなく、ユーザーが求める書体を探すようにしています。
またもっと自由に、書の作品、好きな物語やキャラクターなどからインスピレーションを得ることもあります。
好きな小説に登場する書体が本多さんが手掛けたものだったら、作品への没入感が一段と高まるだろうなと、読者として感じます。作中のキャラクターにぴったり合う書体が使われていたら、それだけで物語の世界観がさらに引き立ちそうで、とても気になります。
ちなみになんですが、学生の頃に展示会で出されたフォントをもしかしてイワタ書体で出す可能性はあったりしますか?
学生時代に作ったものはブラッシュアップが必要だと感じます。また、製品として世に出す際にはクオリティや拡張のための手順などさまざまな要素をしっかりと考え直す必要があります。そういったプロセスを経て完成させるのもきっと楽しいだろうと思いますし、当時から少しは経験を積んだ今作り直してみるのも面白いかもしれません。
ご自身が手掛けたフォントの中で一番気に入ってる (思い入れがある) フォントを教えてください。
やはり「イワタ福まるご」です。制作期間の長さもありますが、なにより多くの方に使用していただけていることが嬉しいです。
イワタに入社したての頃、書体デザイナーの竹下直幸さんから「この先どんな選択をするにせよ、その会社に貢献できる書体を必ず作りなさい」という言葉をいただいたきました。もちろん、常にヒット作を作るのは簡単なことではありません。しかし社会人として、会社や社会のためになる書体を必ずひとつは作りたいという想いがありました。
「イワタ福まるご」はその竹下さんとも一緒につくった書体です。現時点でその言葉に少しは応えられているのではないかと感じています。
少しでもだなんて、とんでもないです。大きな貢献をされていると思います。
ありがとうございます。発売以降徐々に「イワタ福まるご」を目にする機会が増えました。やはり書籍が多く、他にも食品のパッケージやCMなどの映像作品でも見かけるようになりました。
デザイナーの方々は常日頃多くの書体を使い、見比べながら、非常にこだわりを持って選んでいると思います。その中で「イワタ福まるご」も候補に入れていただけていることが、本当に光栄です。

あなたの“推し”フォント

あなたの“推し” フォントを教えてください。

游明朝体

率直にきれいで好きです。優しくて柔らかくて、かつ凜とした品のある書体に思えます。漢字も白の空間が美しく、丁寧に作られたんだろうなと感じます。字游工房さんが手掛ける書体の中でも特に好きな書体の一つです。

石井明朝

こちらも華美でない美しさというか、必然性のある整った上品さのように思います。筆書らしさのある仮名は、その曲線や角度を手書きで真似ようとしてもなかなか書けませんでした。

秀英初号明朝

本文書体も好きですが、見出し系明朝の中では秀英初号が格好良いです。筆の抑揚の心地よい仮名に、たっぷりと墨ののった漢字。こんな生き生きとした字を作れたら楽しいだろうなと思います。

Pirouette

グラフィックデザイナーの立野竜一さんによる欧文書体です。大文字は2本の線を重ねて構成することができ、見ても組んでも楽しいです。カリグラファーのミュリエル・ガチーニ氏に師事された立野さんは手書きや彫刻の文字もどれも非常に美しく、欧文のデザインなどで参考にしています。

弘道軒清朝体

現在はデジタルフォントをイワタから販売していますが、元々は金属活字で、父型は硬い鋼鉄を直接彫って作られました。その父型は手彫りとは思えないほど筆の生々しさがあり、張り詰めたような線の鋭さや緻密さに驚きました。情熱を注ぎ込んで作られたことが伝わってくる書体です。

衝撃を受けた書体・人物

衝撃を受けたフォント・人物を教えてください。

鼎隷書 山村佳苗さん

作者の山村さんは書道が得意な方で、その山村さんがつくる筆書体とはどんなものだろうとわくわくしていました。筆書をデフォルメされたエレメント、四角にとらわれない縦横のびやかな骨格、きゅっと引き締まった仮名と、隷書でありながら親しみやすさを兼ね備えており、いろんなシーンで使ってみたくなる書体です。

百千鳥 西塚涼子さん

レトロかわいいを体現したような書体です。漢字は「口」などの縦画が下部 (ゲタ) だけでなく上にも出ているユニークさで、手書きの懐かしさが感じられるよう様々な工夫が詰まっているのだと思います。さらに複数軸のバリアブルフォント。デザイン面でも技術面でも、制作の裏側まで気になります。

岡澤慶秀さん

秀英体の大改刻で丸ゴシックの仮名類を担当された際、鳥海修さんに「頭がいいのに頭のよさを見せない書体」と評されていたのが印象的です。端正な書体から「どうろのじ」や「こどものじ」のような遊び心のあるものまで手がけており、書も上手な尊敬するデザイナーのお一人です。

大曲都市さん

遊び心と云えば大曲さんも。社会人になりエンジニアの方々の仕事が見えるようになったことで、デザイナーとエンジニアと両方の視点を掛け合わせた書体作りができる強さ、発想の柔軟さなど、見えている世界の広さの違いや、いかに書体制作を楽しんでいらっしゃる方なのかを実感しました。

本多さん直筆メッセージ公開!

今回のインタビューでは、株式会社イワタの書体デザイナー・本多育実さんに直筆メッセージをいただきました!本多さんが携わった「イワタミンゴ」「イワタ福まるご」「イワタ福まるごウネル」など、魅力あふれる書体をぜひご覧ください!

書体一覧はこちら

本多さんも参加された「イワタ 福まるご 制作者インタビュー」もあわせてご覧ください!

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